歯周病治療

歯周病について

歯周病とは、プラーク(歯垢)のなかに含まれる歯周病菌が原因で、歯を支える組織(歯周組織)の歯ぐきや歯槽骨などを破壊していく病気です。
初期のうちは自覚症状はほとんどありません。しかし、違和感に気づいた頃にはすでに重症化していることも多く、抜歯が必要になるケースも多々あります。
現在、日本人が歯を失う原因として最も多い疾患です。

歯周病の原因

⼝腔内の要因

①細菌

歯の表面にこびり付いたプラークは「生きた細菌集団の集合体」で、1/1000g 中に1億個の細菌が棲んでいると言われています。 プラークが硬く石灰化したものが「歯石」で、ブラッシングでは取り除けません。歯石の中に細菌が入り込み、歯周病を進行させる毒素を出し続けます。

②噛み合わせ(歯ぎしり・くいしばり)

歯ぎしりやくいしばりで過度な力が歯にかかると、歯を支える骨(歯槽骨)が壊れる原因になります。 片側で噛む癖がある場合は、噛んでいる側に過度な負担がかかり、歯周病がさらに進行します。

③詰め物や被せ物(補綴物:ほてつぶつ)が合っていない

詰め物や被せ物が合わない場合、境界部分にプラークが蓄積しやすくなります。結果的に、歯周病の発症や進行の原因となり得るため、補綴物の適合性は非常に重要です。

④歯並び(咬合異常・歯列不正など)

不正な歯並びや咬合異常があると、歯ブラシでの清掃が困難になる部位が生じます。結果的にプラークや歯石が溜まりやすくなるのです。

⑤その他

口呼吸、歯根分岐部の病変、歯の形態異常など多岐にわたります。

⽣活習慣の要因

①食生活

糖質が多い食品や柔らかい食事ばかり食べている方は要注意です。口腔内の細菌数が増加し、歯周病にもかかりやすくなってしまうのです。

②喫煙

喫煙をしていると、ニコチンの作用によって歯肉への血液の流れが悪くなります。
また、タバコには唾液分泌抑制作用があるので、口腔内細菌が洗い流されず、蓄積し、増殖しやすく、歯周病のリスクが高まります。

③ストレス

日々ストレスが生じると、睡眠や食生活の乱れなどで免疫力が低下する可能性があります。炎症が起きやすい体質になることで、歯周病の進行・発症リスクが高まります。

④その他

年齢(加齢)、体質(遺伝)、全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症など)、肥満、飲み薬(歯肉増殖を引き起こしやすい薬)などがあります。

歯周病の進行段階(病態と治療)

  • 第一段階

    歯肉炎

    病態

    歯ぐきだけが赤く腫れている状態です。ブラッシング時に出血することがあります。痛みなどの症状がほとんどないため、気付かない方がほとんどです。(この段階で歯科医院を受診して頂きたいです

    治療

    毎日のセルフケアをしっかり行うことや歯科医院でのプロフェッショナルケアを受ければ、歯肉炎は治ります。

  • 第二段階

    軽度歯周炎

    病態

    歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」と呼ばれる溝が形成されます。
    歯周ポケットに細菌が付着し、増殖すると、炎症が深部に波及します。
    徐々に歯を支える骨(歯槽骨)の吸収(破壊)が始まる状態です。ブラッシング時に出血します。(遅くとも、この段階で歯科医院を受診して下さい

    治療

    歯科医院でのプロフェッショナルケアを受ける必要があります。

  • 第三段階

    中等度歯周炎

    病態

    軽度~中等度の歯周炎は、歯周ポケットがさらに深くなり、歯槽骨が溶け、歯がグラつき始める状態です。ブラッシング時の出血に加え、炎症症状(痛み・腫れなど)が出るため、多くの方はこの段階で受診されます

    治療

    プロフェッショナルケア+専門的な歯周病治療(歯周外科治療など)を受ける必要があります。

  • 第四段階

    重度歯周炎

    病態

    中等度~重度の歯周炎は、さらに歯のグラつきが強くなり、歯が抜ける寸前です。食事時に噛むと痛かったり、口臭を強く感じるような状態です。

    治療

    プロフェッショナルケア+専門的な歯周病治療(歯周外科治療など)を受ける必要があります。
    「抜歯」の可能性・必要性が高いことが多いです。

歯磨き(ブラッシング)の時に出血したらできるだけ早く歯科医院を受診しましょう。

歯周病と全身疾患について

口腔は全身の入口です。
歯周病は全身疾患とも深く関わっています。
歯周ポケットから血管を介し、体内に入り込んだ歯周病菌が血流によって全身を巡り、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化、低体重児出産などのリスクを高めると言われています。 定期的なプロフェッショナルケア(メインテナンス)によって、お口を清潔にし続けることは、体全体の健康に結びついているのです。

歯周病が全身疾患のリスクファクターになる疾患例

  • 糖尿病

    糖尿病と歯周病は相互に影響し合います。糖尿病の方は炎症が生じやすいので歯周病にかかりやすい傾向があります。一方で歯周病が進行すると、インスリンの効果を低下させて、血糖値のコントロールが難しくなり、糖尿病が重症化します。

  • 循環器疾患(心疾患・脳血管疾患)

    歯周病は循環器疾患にも影響しています。歯周病菌が血管内に侵入すると、動脈硬化の促進や血管の狭窄・血栓の形成を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めてしまうのです。

  • 高血圧症

    一部の降圧薬は、歯肉の硬化や腫れを引き起こすことがあります。そのため、高血圧治療薬を服用している方は、歯周病のリスクに特に注意が必要です。

  • 早産・低体重児出産

    歯周病菌は子宮収縮を促進することが知られています。妊婦中は歯周病にかかりやすいので、早産や低体重児出産のリスクを抑えるためにも適切な口腔ケアを行いましょう。

  • 骨粗鬆症

    骨粗鬆症の患者様は歯周病が重症化しやすい傾向にあります。全身の骨密度低下が歯周組織にも影響を及ぼすためです。

  • 誤嚥性肺炎

    特にご自身で口腔内を清潔に管理する能力が低い要介護者や高齢者の口腔内には、歯周病菌が非常に多いです。そのため、飲み込む際に、唾液と混ざり肺に入り込む(誤嚥する)ことで、重篤な肺炎や呼吸器疾患(感染・炎症)を引き起こすことが知られています。
    近年、歯周病治療や口腔ケアによる口腔内細菌の減少は、肺炎の発症率を著しく低下させ、肺炎による死亡率も低下させることが知られています。また、入院期間の短縮にも大きな影響を与えていると言われています。

  • 関節リウマチ

    関節リウマチを患う人は歯周病にかかりやすく、重症化もしやすい傾向にあります。また、歯周病の進行によって、関節リウマチも症状が重くなる研究結果が明らかになっています。

  • その他

    歯周ポケットから血管を介し、体内に入り込んだ歯周病菌が血流によって全身を巡ります。そして、体のさまざまな部位やその働きに影響を及ぼしています。
    その他、近年歯周病との関連を指摘されているものには、「メタボリックシンドローム」、「癌」、「認知症」、「腸内細菌」、「バージャー病」などがあります。

歯周病と口臭について

口臭のなかでも歯周病は大きな原因の一つです。歯周病が進行すると、歯肉と歯の間に深い歯周ポケットが形成されます。歯周ポケット内は暗く、ジメジメとした環境なので、歯周病菌が活発に活動します。これが強い口臭の原因となります。

口臭の原因

  • 口腔内細菌

    歯周病菌は、口腔内のタンパク質を分解する過程で「メチルメルカプタン」という揮発性硫黄化合物を生成します。これが歯周病特有の臭いの原因です。メチルメルカプタンはしばしば腐った玉ねぎのような臭いと表現されますが、他にも腐敗した卵の臭いに近いともいわれています。

  • 進行した歯周病

    歯周病が進行するにつれて、歯と歯ぐきの間の歯周ポケットはどんどん深くなります。歯周ポケットの中は酸素が少ない環境なので、細菌はどんどん繁殖してしまいます。そのため歯周病は進行すればするほど、口臭が強くなってしまうのです。

  • 口腔内疾患

    虫歯が原因で口に穴が開くと、食べ物が詰まりやすくなります。このような食べカスは歯ブラシで除去しにくいのが特徴です。放置すると、細菌によって分解されて、強烈な臭いを発するようになります。

歯周病治療について

当院の歯周病治療の特徴

日本歯周病学会認定医による治療

当院の院長は、日本歯周病学会の認定医です。日本歯周病学会では「歯周病を克服することにより、自分の歯を1本でも多く残すこと」を目標として掲げています。
歯周病の脅威が一般の患者様に知られていない段階から、歯周病治療の普及と医療技術の向上に貢献してきました。歯周病認定医は、3年以上研修施設で研修し、厳しい試験に合格した医師に与えられる資格です。
そのような環境で培われた経験をもとに、当院では専門的な知識と技術を活かした歯周病治療を提供しています。

日本歯周病学会のガイドラインを遵守した診療

当院では、⽇本⻭周病学会のガイドラインに沿って診察・検査・診断・治療を進めていきます。治療法の決定には、患者様のご希望もお伺いしながら、日本歯周病学会のガイドラインに沿った科学的根拠に基づいた治療を行っています。

日本歯周病学会のガイドライン

当院で行っている基本的な歯周病治療

ブラッシング指導
歯周病治療の基本は、ご家庭で行う歯磨き(セルフケア)です。ご希望の患者様には、歯周病のリスクポイントやご自身の歯磨きでは磨き残ってしまう場所を中心にブラッシング指導を行います。お口の状態に合わせてデンタルフロス、歯間ブラシ、タフトブラシの使い方をアドバイスさせていただき、ご自身でしっかりセルフケアができるよう、サポートします。
スケーリング・
ルートプレーニング(SRP)
スケーリングは、スケーラーと呼ばれる専用の機器(器具)を使い、歯の表面や歯周ポケットに付着した歯石を除去する方法です。
ルートプレーニングは、歯石除去後の粗造面を一層除去し、表面を滑沢にする方法です。
歯石の表面は口腔内細菌が付着しやすく、歯周病がさらに悪化する原因になります。歯石は、歯の表面に石灰化しこびりついているため、ご自身で歯ブラシで除去しようとしても不可能です。無理に行おうとすると、歯や歯ぐきを傷つける恐れがあります。必ず歯科医院で治療を受けるようにしましょう。
※歯石:歯垢(プラーク)が石灰化したもので、細菌由来の菌体物質を含むもの。
PMTC
(Professional mechanical Tooth Cleaning)
ご自宅での日常のブラッシングでは、歯の表面の汚れを完全に取ることは出来ません。そこで、専用の器具でプラーク・歯石・着色・歯の表面に付着しているタンパク質を取り除くPMTCが有効です。また、茶渋・コーヒー・タバコのヤニなどの着色が取れ、歯の表面がツルツルします。定期的に続けることで、少しずつ悪玉の口腔内の細菌が減少し、虫歯・歯周病予防に効果的です。

歯を長持ちさせるには定期的なプロフェッショナルケア
(メインテナンス・予防)が大切です

虫歯や歯周病は自然に治る病気ではありません。早期の予防と治療が、これらの病気の進行を防ぐためには重要です。また、一度治療をして症状が治まっても、セルフケアの方法や生活習慣を改善しない限りは再発しやすい傾向にあります。そのため、当院では、患者様の歯を健康に保つためのメインテナンスと予防に力を入れています。

予防歯科